妹神(をなりがみ)
美紅は小さく頭を横に振って答えた。
「ううん、逆。沖縄にはヤギいっぱいいるよ。あたしが小さい頃はヤギ飼ってる農家の方が多かったぐらい」
「へえ、そうなんだ。でも、じゃあ、なんでそんなに一生懸命見てるの?この子どこか変かな?」
「ううん。ただ、このヤギ、いつ食べるのかなって思って。給食に出すの?」
次の瞬間、俺と絹子は心底からドン引きした。俺は一歩美紅のそばから離れ、絹子は子ヤギと美紅の間にしゃがんで子ヤギの首をひしと抱きしめた。絹子が少し震える声で美紅に言う。
「あ、あのね、美紅ちゃん……ヤギって食べる物だっけ?」
「え?沖縄ではヒージャーって言ってよく食べるよ。町の食堂ではヤギ汁が普通にあるし。あと、大人はお酒のつまみによくヤギ刺し食べるし」
「ヤギ刺し……つまりヤギの肉のお刺身?」
絹子の顔が少し青ざめていたが、天然ボケの美紅がそれに気がつくはずはなく、平然とこう言った。
「うん。酒のつまみには最高だって、近所のおじいさんたちがよく言ってた」
俺はさすがにフォローを入れずにはいられなかった。
「ま、まあ、考えてみりゃ、ヤギって家畜なんだから、その肉食べる習慣があってもおかしくはないよな。なんたって世界は広いんだからさ……あははは……」
絹子も俺に合わせて、しかしひきつった笑いを顔に浮かべながら恐る恐る美紅に訊いた。
「あ、あのさ……それで美紅ちゃんは好きなの?その、ヤギのお肉……」
「ううん、逆。沖縄にはヤギいっぱいいるよ。あたしが小さい頃はヤギ飼ってる農家の方が多かったぐらい」
「へえ、そうなんだ。でも、じゃあ、なんでそんなに一生懸命見てるの?この子どこか変かな?」
「ううん。ただ、このヤギ、いつ食べるのかなって思って。給食に出すの?」
次の瞬間、俺と絹子は心底からドン引きした。俺は一歩美紅のそばから離れ、絹子は子ヤギと美紅の間にしゃがんで子ヤギの首をひしと抱きしめた。絹子が少し震える声で美紅に言う。
「あ、あのね、美紅ちゃん……ヤギって食べる物だっけ?」
「え?沖縄ではヒージャーって言ってよく食べるよ。町の食堂ではヤギ汁が普通にあるし。あと、大人はお酒のつまみによくヤギ刺し食べるし」
「ヤギ刺し……つまりヤギの肉のお刺身?」
絹子の顔が少し青ざめていたが、天然ボケの美紅がそれに気がつくはずはなく、平然とこう言った。
「うん。酒のつまみには最高だって、近所のおじいさんたちがよく言ってた」
俺はさすがにフォローを入れずにはいられなかった。
「ま、まあ、考えてみりゃ、ヤギって家畜なんだから、その肉食べる習慣があってもおかしくはないよな。なんたって世界は広いんだからさ……あははは……」
絹子も俺に合わせて、しかしひきつった笑いを顔に浮かべながら恐る恐る美紅に訊いた。
「あ、あのさ……それで美紅ちゃんは好きなの?その、ヤギのお肉……」