妹神(をなりがみ)
 彼女は頭を上げ俺の目をじっと見つめながら言った。
「あなたがあたしの『えけり』なんですね。ふつつか者ですが、これからよろしくお願いします」
 俺も絹子も彼女を立たせようとする事も忘れてその場で固まってしまった。何だ!いったい何だ?今のあいさつは?そもそも「えけり」って何だ。そんな言葉聞いたこともないぞ。
 俺の頭の中を過去にテレビドラマやマンガやアニメやギャルゲーで見た様々なパターンが走馬灯のように走り抜けた。
 本人も知らないうちに昔親が勝手に決めた許嫁?いや待てよ、親父の隠し子って線もあるな。いや、それとも……
「あ、あのね……とにかく立って。こんなとこじゃ雄二も困るし……」
 絹子に急かされて彼女はやっと立ちあがる。その時俺たちの真横に、キキーと派手なブレーキ音響かせてオンボロのセダンが止まった。ガラスが下がった運転席の窓から顔を出したのは、なんと俺の母ちゃん!
「よかった!ごめーん。空港で行き違いになっちゃったのよ!」
と叫ぶ母ちゃん。あっ!
 思い出した!なんで俺があんな変わった読み方する漢字の姓をすぐに読めたのかも!大西風でアマサキって母ちゃんの旧姓だ!
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