妹神(をなりがみ)
第6章 殉教の地、神々の島
一週間後、俺たち三人は羽田空港から旅立った。が、母ちゃんが思いがけない事を言い出した。搭乗ゲートへ向かう時俺が気づいたんだが。
「ちょっと母さん、沖縄行きの飛行機のゲートはあっちじゃ?」
母ちゃんは涼しい顔でこう言った。
「その前にちょっと寄り道するわよ。まず長崎へ行くのよ」
という訳で、なぜか分からないまま俺たちは長崎空港に着き、そこから鉄道のローカル線を乗り継いで島原という小さな市へたどり着いた。そこは海に面した港町で近くに雲仙という火山地帯がある所だ。なんで母ちゃんはわざわざこんな場所へ来たんだろう。
それからタクシーで町はずれの墓地へ行く。この街へ来た時から感じていたが、妙に教会や西洋っぽい古い建物が多い。その墓地も仏教式の普通のお墓のある場所と、キリスト教式のお墓が隣り合っているという珍しい墓地だ。
俺は何が何だか分からないまま、スタスタと歩く母ちゃんの後を美紅と一緒について行くしかなかった。やがて高さ一メートルもない小さな祠というか御堂と言うか、そんな感じの建物の前に来た。
母ちゃんは観音開きと言うやつで、二枚の木の扉が左右に開くその建物の扉を開ける。その中にあった物を見た瞬間、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。そこには古ぼけて表面の形が少し崩れた陶器で出来た像があった。
そしてその像の形が、あれとそっくりだった。隆平の家に現れた時のあの連続殺人鬼の姿にそっくりに見えたからだ。頭からすっぽり足もとまで覆う布をかぶって、両手で子供を抱いている。あの姿だ。俺は思わずその場の地面に尻もちをついてへたり込んでしまった。だが美紅は顔色ひとつ変えずにスタスタとその像に近づいた。俺は思わず美紅を止めようとした。
「ば、馬鹿、よせ、美紅……それは……」
「ちょっと母さん、沖縄行きの飛行機のゲートはあっちじゃ?」
母ちゃんは涼しい顔でこう言った。
「その前にちょっと寄り道するわよ。まず長崎へ行くのよ」
という訳で、なぜか分からないまま俺たちは長崎空港に着き、そこから鉄道のローカル線を乗り継いで島原という小さな市へたどり着いた。そこは海に面した港町で近くに雲仙という火山地帯がある所だ。なんで母ちゃんはわざわざこんな場所へ来たんだろう。
それからタクシーで町はずれの墓地へ行く。この街へ来た時から感じていたが、妙に教会や西洋っぽい古い建物が多い。その墓地も仏教式の普通のお墓のある場所と、キリスト教式のお墓が隣り合っているという珍しい墓地だ。
俺は何が何だか分からないまま、スタスタと歩く母ちゃんの後を美紅と一緒について行くしかなかった。やがて高さ一メートルもない小さな祠というか御堂と言うか、そんな感じの建物の前に来た。
母ちゃんは観音開きと言うやつで、二枚の木の扉が左右に開くその建物の扉を開ける。その中にあった物を見た瞬間、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。そこには古ぼけて表面の形が少し崩れた陶器で出来た像があった。
そしてその像の形が、あれとそっくりだった。隆平の家に現れた時のあの連続殺人鬼の姿にそっくりに見えたからだ。頭からすっぽり足もとまで覆う布をかぶって、両手で子供を抱いている。あの姿だ。俺は思わずその場の地面に尻もちをついてへたり込んでしまった。だが美紅は顔色ひとつ変えずにスタスタとその像に近づいた。俺は思わず美紅を止めようとした。
「ば、馬鹿、よせ、美紅……それは……」