妹神(をなりがみ)
「じゃ、じゃあ、その美紅って子もその『ノロ』なのか?」
「違う……あたしはユタ」
これは美紅が突然言った。また知らない言葉が出てきた。今度はユタ?美紅が続ける。
「大西風家はノロの血筋は引いているけど、遠い昔にノロを継ぐ資格を失った。だからあたしはユタ……」
どうでもいいけど表情に乏しい子だな。しゃべり方も妙に抑揚がないし。俺は助けを求めるように母ちゃんの顔を見た。母ちゃんが説明を再開する。
「ノロというのは昔、沖縄が琉球という日本とは別の国だった時代に、琉球の王様から正式に任命される格式の高い巫女というか霊能者ね。だからノロになるには先代のノロの推薦を受けて宮廷から正式に許可をもらう必要があるの。と同時にノロは琉球王朝の宗教を司る公的な称号でもあったわけ。それに対して、ユタというのは民間で活動する霊能者で、素質があれば誰でもなれるの。ユタを名乗るには別に宮廷の許可とかは必要ない。まあ、こっち本土でいうイタコとか拝み屋みたいな物。そういう違いがあるわけ」
俺はその手の話は信じない性質だ。母親が宗教民俗学なんて風変わりな学問を職業にしている反動なのか、俺は非科学的な物には全然興味がない。だからノロとかユタとか、それはまあいいだろ。だが、訊くべき事は別にある。
「で、母さん。その話と、俺に実の妹がいる事を知らされないできた事と、どう関係があんの?」
「実はねえ、あたしはその家の後継ぎだったんだけど、その役目放りだして、本土から来たヤマトンチュー……あ、これは沖縄の言葉で日本本土の人間の事ね……そのヤマトンチューの男と駆け落ちしちゃったのよ」
「違う……あたしはユタ」
これは美紅が突然言った。また知らない言葉が出てきた。今度はユタ?美紅が続ける。
「大西風家はノロの血筋は引いているけど、遠い昔にノロを継ぐ資格を失った。だからあたしはユタ……」
どうでもいいけど表情に乏しい子だな。しゃべり方も妙に抑揚がないし。俺は助けを求めるように母ちゃんの顔を見た。母ちゃんが説明を再開する。
「ノロというのは昔、沖縄が琉球という日本とは別の国だった時代に、琉球の王様から正式に任命される格式の高い巫女というか霊能者ね。だからノロになるには先代のノロの推薦を受けて宮廷から正式に許可をもらう必要があるの。と同時にノロは琉球王朝の宗教を司る公的な称号でもあったわけ。それに対して、ユタというのは民間で活動する霊能者で、素質があれば誰でもなれるの。ユタを名乗るには別に宮廷の許可とかは必要ない。まあ、こっち本土でいうイタコとか拝み屋みたいな物。そういう違いがあるわけ」
俺はその手の話は信じない性質だ。母親が宗教民俗学なんて風変わりな学問を職業にしている反動なのか、俺は非科学的な物には全然興味がない。だからノロとかユタとか、それはまあいいだろ。だが、訊くべき事は別にある。
「で、母さん。その話と、俺に実の妹がいる事を知らされないできた事と、どう関係があんの?」
「実はねえ、あたしはその家の後継ぎだったんだけど、その役目放りだして、本土から来たヤマトンチュー……あ、これは沖縄の言葉で日本本土の人間の事ね……そのヤマトンチューの男と駆け落ちしちゃったのよ」