ありえない彼氏
「えっと……斉藤くん…?」


黒いオーラを漂わせながらケータイを見つめる翔太に控えめに声をかけてみる。

翔太はくるっと私の方を向いたかと思うと、そのまま勢いよく抱きついてきた。


「わ、わわわっ!」


慌てて手をついてなんとか倒れそうになるのを防ぐと、翔太がギューッと苦しいくらいの力で抱きしめてくる。

「…義明たちが家来るんだって……。」


ぼそっと呟く声は暗く、同時に溜め息をつく。

「せっかく由香といちゃいちゃしてたのに……。」


ぶう、と頬を膨らませて不貞腐れる翔太。

まるで幼稚園児のよう。


(あぁ、もう…。いちいち可愛いなぁ…)


私は笑いながら翔太の頭を撫でた。



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