ありえない彼氏
「行っちゃダメ。」

潤んだ瞳で翔太に見つめられる。

腕を掴む手からは熱い体温が伝わってきて。

「…でも翔太、何か食べて薬飲まないと…。」


しゃがみこんで翔太の頭を撫でながら言うと、翔太は首をふるふると小さく横に振った。

「俺…風邪じゃないもん…。」

「え…?」

「やっと由香とデートできるーって思ったら、テンション上がって……だから風邪じゃなくて…なんていうんだっけ、こういう熱…。」


「……知恵熱?」

「そうそれ…。」

翔太は力なくふにゃり、と笑うと、掴んでいた私の腕の手に自分の指を絡める。



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