俺の彼女はインベーダー
 一方的な録音の再生のように思えたが、俺はある可能性に賭けてみた。
「ひとつ訊きたい。なぜこの星が選ばれた?」
「彼女がこの星への流刑を自分から希望したためだ」
 やっぱりそうだ。これは機械が再生している声じゃない。誰かが機械を通じて話しているんだ。
「自分で希望した?だとしても、前任地と同じ星への流刑がよく認められたな?」
「クッ、クッ……」
 機械の声が笑った。機械臭い声だが、通信機の向こう側にいる誰かが笑ったのだ。
「侵略、征服は軍の管轄だ。が、軍から送られて来た囚人の処罰を受け持つこっちは別のお役所でね……彼女が征服に行かされた星と、流刑で送られる星が同じかどうかなんて事は、まあ、我々には関係ない話……そういう事だ」
 官僚主義万歳!お役所仕事万歳。どこの星にも役人根性の持ち主はいて、そしてその中にはこういうシャレが分かってくれる人たちも多少はいる。これは宇宙の知的生命体に共通する真理なのかもしれない。
「では説明は終わりだ。さらばだ、地球人」
 そう言い終わるとその機械は宙に浮き、そのまま見えなくなるほど空高くに上昇し、そこでパン!と音を立てて跡かたもなく破裂した。
 するとラミエルが気絶から覚めたかのように、俺たちと周りの風景を見回した。俺たちの顔を見ても相変わらず何の反応も示さない。焦れた麻耶がラミエルの両肩をつかんで彼女の体全体を揺さぶりながら叫ぶ。
「ラミちゃん、あたしが分からないの!」
「ここは何という惑星ですか?」
 ラミエルが寝ぼけた様な口調で尋ねる。確かに日本語以外の記憶は消されてしまっているようだ。
「地球だよ。俺たちはそう呼んでいる」
 俺は声が震えるのを必死で押さえながら答えてやった。
「君はどの星から来たんだい?」
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