俺の彼女はインベーダー
 俺はあくまで初対面の相手に言うように話を進めた。地球での記憶も自分の故郷の星の記憶も全てなくしているのなら、ラミエルとして話しかけても彼女を混乱させるだけだ。
 ラミエルはしばらく額に指をあてていたが、力なく首を振って言った。
「分かりません……何も思い出せない……」
「ラミエル……あなたはラミエルよ。あなたの名前はラミエルよ!あたしに『ラミちゃん』って呼ばれてた事、覚えてないの?」
「もうよせ。彼女は記憶を消されてしまったんだ」
 麻耶の頬にぽろぽろ涙がこぼれているのに気づいてラミエルは指でそっとその涙の粒をぬぐってあげた。
「ごめんなさい……何も思い出せないのよ、麻耶ちゃん」
 麻耶がはっとして俺の方を見た。
「兄さん……あたし、今日ここに来てからラミちゃんに自分の名前言ったかしら?」
 俺はさっきからのやり取りを思い出しながら答えた。
「いや……お前は一度も名乗ってない。俺も彼女にはお前の名前は言ってない……そのはずだ!」
「あ、あの……」
 ラミエルが少し怯えたように口をはさんだ。
「あの……名前違いましたか?きゃっ、すいません……すいません……あたし、この星に来たばかりで……」
 やれやれ、記憶は消去されていてもこの性格は変わっていないらしい。
「いや、違ってないよ。そいつの名前は麻耶」
 そういう俺を不思議そうにじっと見つめて、そしてラミエルはゆっくり口にした。
「ハ・ヤ・タ……早太さん?」
「そう俺は早太。名前を思い出したのか?」
「いえ、何となく頭にうかんできて……なぜでしょう?今初めて会ったのに?」
「今は分からなくていい。とにかく君はこれからこの星で生きていく。俺と麻耶はこの星での最初の君の友達……そんなところでどうだい?」
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