俺の彼女はインベーダー
「ラミちゃーん」
 麻耶が我慢しきれなくなってラミエルに飛びついた。そのままラミエルの胸に顔をうずめてうれし泣きを始めた。
 俺もラミエルの隣に座り彼女の頭を片腕を回して抱き寄せて、その紫の髪を自分の頬に押しつけた。彼女は少し痩せたようだった。いくら任務に失敗したからって、ひどい目に遭わされたものだ。
 『文明の発達していない野蛮な惑星』に一生島流しにされるなんて……それなのに自分から望んで地球を選んでくれたなんて。
……何か地球人としてのプライドに深く引っかかる物を感じたような気がしたが、気にしない事にした。今はそんな事はどうでもいい。
 ラミエルが俺たちの所へ帰ってきてくれた。それ以外の事は今はどうでもいい。
 記憶を消されたのも、こうなってはむしろ好都合かもしれない。そう俺は思った。自分がかつて命令とはいえ、この地球という星を侵略し征服しようとしていたなんて、そんな記憶は今のラミエルには必要ない。
 むしろ永遠に記憶の奥底に封印して、一生思い出さない方がいい。今の彼女に必要なのは過去の記憶じゃない。これからこの地球で生活して、泣いて笑って、怒ってむくれて、俺たちと一緒に食べて遊んで、たまにはケンカして……そうやって作られていく、人間らしい、日々の暮らしの思い出だ。
 しばらく再開の喜びに浸った後、俺と麻耶はラミエルを両側から挟むようにして俺のアパートへ向かって歩き出した。やっぱり引っ越しだな、と俺はそんな事を考えていた。ラミエルを一緒に暮させて、麻耶がしょっちゅう押しかけて来るとなると今のアパートは狭すぎるしボロ過ぎる。
「あのう……わたしはこれからどうすればいいのでしょう?わたしはどうなるんでしょうか?」
 ラミエルが不安を丸出しにして尋ねる。麻耶はラミエルの左腕にすがりついて、まるで母親に甘える子供の様にくっついてこう答えた。
「あたしたちとこの星で一緒に暮らすのよ。これからはずっと、そうずっと一緒よ。兄さんも大学受かったことだし、ラミちゃん一人ぐらい面倒見れるでしょ」
< 102 / 214 >

この作品をシェア

pagetop