俺の彼女はインベーダー
「北条早太さん、ですね?」
 突然見ず知らずの、それも若くて美人とは言え、どこか異様な雰囲気の相手にフルネームで呼ばれて俺は息が止まりそうにどきっとした。もちろん、さっきとは別の意味でだ。そのおねえさんは胸の内ポケットから身分証、警察官が持っているあれより少し大きなやつを俺の目の前にかざして言った。
「自衛隊統合幕僚監部、直属特殊作戦本部付き、桂木律子二尉です。国家の緊急案件にあなたのご協力をいただきます。これより、ご同行願います」
 は?俺はその場に固まってしまった。そうか!自衛隊!俺はラミエルの、正確には麻耶の主導する地球征服計画に何度も協力してきている。あれがばれたのか?
 あわてて振り返って逃げようとしたが、いつの間にか俺の背後には見上げるような大男の自衛隊員らしき黒いスーツ姿の二人が立ちはだかっていた。
「あ、あの、すいません。人違いじゃありませんか?すいませんが、俺今ちょっと急いでまして……」
 俺はとりあえずとぼけて見せる事にした。あの一連の件、いくら自衛隊だって全てをつかんでいるわけじゃないかもしれない。
 しかし俺の後ろから近づいてきたその女性の二尉が俺の背中に右手を伸ばすと、俺は何か小さく細い筒状の物体が押しあてられているのに気づいた。ま、まさか、拳銃!
「これはお願いしているのではありませんよ。国家の命令だと思って下さい」
 その大男二人に両腕をつかまれて引きずられるように、俺はバンの後ろのハッチバッグドアから中に放り込まれた。そこは運転席からは壁で仕切られた構造になっていた。まるで映画で見た囚人護送車みたいだ。
 窓ガラスはスモークスクリーンというやつか、黒っぽくて内側から外は見えるが外から内部は見られないようになっている。座席は普通の車と違って横の窓を背にして座るベンチみたいなのが両側に二列に並んでいる。
< 105 / 214 >

この作品をシェア

pagetop