俺の彼女はインベーダー
 その奥を見て俺は思わず「アッ!」と声を上げた。その左側のシートの奥にはラミエルガすっかり怯えた表情で、小さく体を震わせながら、うずくまるようにして座っていた。そうか、なんてこった!既にラミエルにも手が回っていたのか?さすが自衛隊、この辺はやる事がプロだ。
 俺が二人の男から右側のシートの奥に押し込まれるように座らされると、ラミエルが半泣きの顔で俺の両手をつかんで叫んだ。
「早太さん!これは一体どうゆうことなんですか?この人たちは誰なんです?どうしてわたしが?なんで早太さんまでが?これからどこへ連れて行かれるんですか?」
 いや、そう矢継ぎ早に質問されても、俺にも何が何だか分からない。少なくとも君と一緒になってやってた、あの地球征服が……と言いかけて俺は言葉を飲み込んだ。ラミエルは前回地球に来た時の記憶を全て消されている。その話をしても、何が何だかラミエル本人にだって分かるはずはない。
 俺たちとドアの間をふさぐように男たちがシートに陣取り、ドアを閉じる。なんか俺には牢獄の扉が目の前で閉じた様に感じた。
「あ、あの……これからどこへ行くんですか?」
 車が走り出した直後、一応俺は訊いてみたが無論彼らが答えるはずはなく、石像のように無表情で身じろぎ一つせず、俺の質問は完ぺきに無視された。
 恐怖のあまり黙りこくってラミエルは俺の腕にしがみつき、あまり力を入れるので痛いぐらいだった。俺も膝がガクガク震えるのを自覚しながら、黙って車の窓の外を流れる景色を見つめていた。
 三十分ぐらい走った頃、俺は気づいた。変だな?この車、東京都心へ向かっているみたいだ。てっきり人気のない山の中にでも向かうものと思い込んでいた俺は、二重に頭が混乱した。それからさらに二十分ほど経って、馬鹿に高い塀に囲まれただだっ広い敷地の横へさしかかった。中にはでかい鉄筋コンクリートのビルがいくつか、敷地の端の方にはやけに高い鉄塔が見える。
 一瞬刑務所と監視塔かと思ったが、どうも違う。その鉄塔はどっちかと言うと放送局のビルのてっぺんにあるようなやつとよく似ている。
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