俺の彼女はインベーダー
 そして車はスピードを緩めると、これも馬鹿でかい鉄の門からその敷地に入っていく。その時俺の視界に門に掛っている看板が飛びこんできた。そして俺はまた一瞬呆気にとられた。その看板にはでかい文字で「防衛省」と書いてあったからだ。
 てことは何か?ここは新宿区市ヶ谷?防衛省本省?どういう事だ?仮に、いや多分そうだろうが、例の地球征服の陰謀の犯人が俺たちだとばれたのだとして、なぜいきなり防衛省の本部へ、なんだ?
 門をくぐるとなぜかけっこう急な坂になっていて、やがて車は奥の方のビルの入り口で停まった。そして俺とラミエルの隣の男たちは無言でドアを開け、俺たちを外に引っ張り出す。運転席のドアからは例の女二尉が降り立ち、そのまま建物のドアに向かってすたすたと歩き出した。男たちが俺とラミエルをそれぞれ腕をつかんで有無を言わせぬ力でその後に続かせる。
 エレベーターで4階へ上り、ある部屋の前に今度は制服姿の男性自衛官が立っていた。俺は一瞬息が止まりそうになった。その自衛官は、腰に馬鹿でかい拳銃を下げていたからだ。警察官が下げているような可愛らしいタイプじゃない。洞穴のような太い銃口の自動拳銃だ。
 その自衛官は二尉の姿を目にするやいなや、背筋をピンと立てて素早く右手を上げて敬礼した。二尉も軽く手を上げて敬礼を返し、無言でドアノブに視線を向ける。見張りらしいその自衛官は腰のベルトに下げていた丸い金属の輪に通された鍵でドアを解錠した。
 二尉が部屋に入り、俺たちは背中を押されてその部屋に押し込まれた。だがあの男たちはついてこなかった。そのままドアがガチャンと閉じられる。
 そこはなんか小さな会議室みたいだった。よくある長いテーブルとパイプ椅子と、奥にこれもやけに馬鹿でかい薄型テレビやらビデオやらパソコン……そして、麻耶!ああ、やっぱりこいつも拉致されていたか。
 どうやら麻耶も学校から直接連れてこられたようで、制服のセーラー服にローファーの靴。ふてくされた表情でパイプ椅子の一つに座り、脚を高々と組んで俺たちの方を一瞥して、面倒くさそうにいつもの憎まれ口を叩いた。
「ああ、やっぱりね。これで勢ぞろいってわけか。で、そこの女軍人さん、あたし達をどうする気?拷問でもするわけ?言っとくけど、あたしはMの趣味はないわよ」
< 107 / 214 >

この作品をシェア

pagetop