俺の彼女はインベーダー
 確かにお分かりだ。ラミエルの星が新しい地球征服要員を送り込んで来た、という事に違いない。まあ、どうせまた、アミダくじで選ばれた奴なんだろうが。二尉はラミエルの方に顔を向けて言った。
「さあ、ラミエルさん。あなたの惑星の情報をいただけるかしら?」
 桂木二尉の顔は相変わらずほほ笑んでいた。しかしその眼光は急に鋭さを増した。その視線に怯えたラミエルがものすごい勢いで立ち上がり俺の腕にしがみつく。俺も引きずられて椅子から立ちあがってしまった。
 仕方なく俺は、ラミエルが記憶を失っている事、なぜそうなったのか、そのいきさつを全て二尉に話した。しばらく黙って聞いていた二尉は、ふうっと溜息をついて言った。
「その様子じゃ嘘ではないようね。やれやれ、あてが外れたわ。まあ、でも、君たち、宇宙人のテクノロジーに触れた経験はあるわけだし。それに、以前君たちがやった事って、一応犯罪行為なのよねえ。そこで取り引き!どう、私の仕事手伝わない?もちろん、お給料は出るわよ。学生のアルバイトとしちゃ、結構いい時給になると思うけど」
 てっきり目を輝かせて飛びつくと思った麻耶が即答した。
「お断りします!」
 そう言って二尉のすぐ前に立ち上がり、毅然として言い放った。
「ラミちゃんは、やっと平和な普通の生活を手に入れたばかりなのよ。国家だかなんだか知らないけど、それを取り上げる気なら、あたしが相手になるわよ」
 おお!麻耶!俺はおまえを誤解していた。そうか、そんなにラミエルの身を……
 目頭を熱くしている俺からほんの数メートルの場所で女ながら雄々しくも国家権力に立ち向かっている我が妹。桂木二尉は、しかし、麻耶の言葉に全く動じた様子もなく言葉を続けた。
「ええと、北条麻耶さんだったわね。あなた確か今高2よね。進路はもう決めた」
「まだですけど。それが何か?」
 桂木二尉は麻耶の肩に手を置いて、満面の笑みを顔に浮かべながら言う。
「あなた、防衛大学校に入る気ない?授業料いらないどころか、逆にお給料もらえるのよ。いろんな特殊な資格とかも取れるし。卒業したら即尉官、つまり昔で言う士官候補生ね。それに自衛隊って国家公務員だし……」
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