俺の彼女はインベーダー
 二尉の言葉が終わらないうちに麻耶は、肩に乗った二尉の手を振り払うかのようにくるっと体を反回転させ、そのまままっすぐに俺とラミエルのとこまで歩いてきた。その両目は何かの決意に満ちているように見えた。そして俺たちの後ろに周り、俺たちの体の間に割って入るようにそれぞれの手を俺とラミエルの肩に回してぎゅっと抱きついた。
 そうか、我が妹よ。おまえの決意はちゃんと俺の胸に伝わったぞ。そうだ、俺はラミエルの、そして彼女の地球での新しい平和な人生を守る。ははは、痛いな、麻耶、ちょっと力入れすぎ……ありゃ?
 麻耶はそのまま俺とラミエルの首をプロレスのヘッドロックの形で抱きしめたまま、つかつかと前に歩きだした。当然俺とラミエルは麻耶に首根っこを押さえつけられた格好で引きずられて行く事になる。
 で、桂木二尉の側まで戻って麻耶はさっきとは別人のような愛想のいい声でこうぬかしやがった。
「ええ、もう、どうとでもこき使ってやって下さい。あたしもお力になれる事があったら何なりと。国家の、いえ、地球の一大事に協力するのは市民の当然の義務ですからあ~」
 こ、この野郎!国家公務員てのに釣られやがったな。
「こら、麻耶、て、てめえ、三十秒前と言ってる事が真逆じゃねえか!」
 次の瞬間、突然部屋の全ての灯りが消えた。そこは建物の奥にある窓のない部屋だったから、あたりは完全に暗闇になった。ドアの外で何かけたたましい音がしたと思ったら、入口のドアがズシーンという物凄い轟音を立てて部屋のこっち側に倒れて来た。開いたんじゃない。壁からむしり取られて倒れて来たんだ!
 ドアのあった所からかすかに光が差し込んで来た。そして人影が一つ、目にも留らぬ速さで俺の方へ一直線に飛ぶように近づいてきた。いや、俺じゃない。ラミエルに向かってだ。俺はとっさに自分の体でラミエルをかばった。俺の背後から桂木二尉がこれも目にも留らぬ速さで飛び出そうとしていた。
 だが、次の瞬間、俺の体は宙に浮いた。脚が床から30センチは浮いている。その人影は俺の体に指一本触れてもいないのに!俺とラミエルのすぐ後ろに走り寄っていた桂木二尉も同じだった。体が宙に浮いて、そのまま俺と二尉は部屋の片隅に二人まとめて吹っ飛ばされた。
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