俺の彼女はインベーダー

　突然背後からそういう声がして、俺の後頭部に衝撃が走り、俺の額はレジャーシートの表面に激突した。あわてて振り向くと、そこには麻耶の靴の裏が見えていた。
「ま、麻耶、てめえ！今、実の兄の頭を足蹴にしたか～？」
　麻耶は足を降ろすと顔をぐいっと俺の方に寄せて冷たい口調で言った。
「あのね、今の状況分かってんの？あの二人は敵なのよ。宇宙人なのよ。侵略者なのよ！なに一緒になって、ほのぼのと世間話してるわけ？」
　そ、そうだった。俺はとっさにラミエルの腕を取って後ろに跳びすざった。サチエルとユミエルもハッとした顔で同じように跳び起きて池の縁まで後ずさりする。サチエルが掌を口元にあてて言った。
「こ、これは、わたくしとした事が……では、今回はご挨拶ということで、これで失礼いたしますわ。ラミエルさん！」
　彼女はスカートのポケットから何かを取り出し、それをラミエルに向けて放り投げた。それはあり得ないゆっくりとしたスピードで宙をまっすぐに滑るように移動し、ラミエルの手の中に着地した。ただ放り投げたんじゃない。例の超能力で空中を運んでいるんだ。それはラミエルが以前使っていた、コンパクト型のスーパーコンピューターだった。
「相手が弱過ぎては張り合いがありませんものね。では、ごきげんよう」
　サチエルが不敵そうな笑いを浮かべてユミエルを横から抱きかかえるような姿勢を取り、そして次の瞬間、二人の体は百メートルほど上空に文字通り飛び上がった！そして、サチエルの高笑いを残しながら、二人の体はそのままロケットのように空の彼方に飛び去ってあっという間に見えなくなった。
「なるほど。空飛んで逃げたというのは、寝言じゃなかったのね」
　それまで沈黙して事の成り行きをじっと観察していた桂木二尉が誰に言うともなく口にした。俺は背筋が寒くなるのを感じた。あれもテレキネシスとかいう超能力なのか？自分だけでなく、人間を一人抱えて空を飛ぶなんて……