俺の彼女はインベーダー
「兄さん!今行くわよ!」
 無線から響いてきたのは麻耶の声だった。あわてて周りを見渡すと、右手の方向から俺の初号機とそっくりな形のロボットがタイヤをきしませて走って来る。塗装が赤いところだけが違うが全く同じ形。そうか、あれが麻耶用の二号機。
 麻耶の二号機はそのまま左腕を外し、反陽子ビーム砲の銃口を戦闘機が変形した敵ロボットに向けて構える。だが……俺はのどが裂けるかと思うほどの大声で麻耶に向かって無線越しに叫んだ。
「麻耶!ば、ばか、よせ。お前の二号機、まだ胸のランプが青のまま!」
 だが麻耶の二号機はおかまいなしに反陽子ビームを発射した。そのビームは狙いたがわず、敵のロボットに命中し、敵の機体は俺の目の前で閃光とともに砕け散った。その破片は四方に飛び散りマクスウェルの魔女たちにも襲いかかったが、サチエルはテレキネシスのバリアでそれを涼しい顔で防いだ。
「わたくしとした事が、すこし侮り過ぎましたようね。今回はこれでお暇いたしましょう。では、いずれまた」
 サチエルはそう言って2号ユミエルを抱いてロケットのように空の彼方に飛び去って行った。
俺は必死で二号機の中の麻耶に向かって叫び続けた。
「麻耶!麻耶!すぐ脱出するんだ!どうした麻耶、返事をしてくれええええ!」
 数秒後、麻耶のどなり声が俺の頭の中全体に響き渡った。
「ああ、うるさいわね、もう!無線機通してるから、もろに耳に響くんだけど!」
「麻耶!無事なのか?」
「なんともないわよ。ちょっと桂木さん、どういう事?ランプが青のままであれ撃ったけど別に何ともないわよ」
 へ?
「計器も全部正常だし」
 は?
「別に警告音とかも鳴ってないし。エンジンの音も変わりないけど。どうなってんの?」
 はあ?
「あら、おかしいわね。とにかく一度倉庫に戻って。初号機の早太君、聞こえる?どう?自力で動けそう?」
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