俺の彼女はインベーダー
第11章 劣情ロマンチカ
 それから二週間ほどは何事も起こらず、俺は大学の単位を落としそうな授業への出席に専念した。蒸し暑い日が多くなり、衣替えで半袖姿が目立ち始めた梅雨入り直後に、またしてもマクスウェルの魔女たちからのメールがラミエルのスパコンに届いた。そこには、意味不明な一文がこう記してあった。
「東京の街がひとつ腐海に呑まれるだろう」
 早速桂木二尉のもとへ集合したいつもの面々、つまり俺、麻耶、ラミエルと二尉は首をかしげるばかりだった。
「腐海ねえ……なんか、どこかで聞いた事はあるような気もするけど。ラミエルさん、あなたは何か心当たりある?」
 そう尋ねる二尉にラミエルはただ首を横に振るばかりだった。
「さあ?わたしの惑星にもそんな物があるという話は聞いた事もないです」
 二尉はとりあえず都内の自衛隊の各施設に何か異常の兆候はないか、調べてもらう事にした。その日は一旦解散し、二日後にまた防衛省に集まったところで、二尉がまだ半分首をかしげながら俺たちに告げた。
「この前の予告状と関係があるのかどうか分からないんだけど。自衛隊の通信施設から妙な報告があったのよ」
「通信部隊ですか?」と、これは俺。
「そう。十日ぐらい前から、正体不明の電波が都内で観測されているの。東京都内のどこかから日本中に発信されているんだけど、もちろん放送や通信の電波ではないし、自衛隊や駐留米軍が使うような特殊な通信波でもない。周波数が1から3ヘルツの、とても微弱な電波なんだけど」
「十日前って言いました?」
 麻耶が珍しく険しい顔つきで問い返した。
「ええ。何か心当たりでも?」
「ううん、関係あるかどうかは分かんないんだけど。ちょうど十日ぐらい前から変な夢にうなされて夜中に目を覚ます事があるのよね」
「え?それで、どんな夢なの?」
「いえ、それが内容を全然覚えてなくて。ただ、なんか気持ち悪いって言うか、キモイ物を見たような気はするんだけど、目を覚ました時には何も記憶がないのよね」
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