俺の彼女はインベーダー
 平日だし、6時の閉園時間を過ぎているので人影はなく、時折公園の外の道路を通る車の音がかすかに響いてくるぐらいで、やけに静かだった。東京の中では辺鄙な場所とはいえ、防衛省から10キロ足らずの距離にこんな場所がある事を俺は初めて知ってちょっと驚いた。
 やがて木々の向こうに全面ガラス張りの植物園の屋根がのぞいている方角から、二つの人影が空から現れた。うち一つが見上げている俺たちの、向かって右手の窪地の縁にすっと降り立った。続いて左手側にもう一つ。
 二人は今日は全身をすっぽり包む、大型のオートバイに乗る人たちが着るスーツを着込んでいた。向こうも戦闘用の服装というわけか。俺は二人を見上げながら思わずうなった。
「出たな。マクスウェルの魔女、1号と2号!」
 向かって右側に立っているサチエルが髪を後ろにかき上げながら不満そうに応えた。
「あら、わたくし達の麗しい名前はご存じのはずですのに、そんな無粋な番号で呼ばれるとは心外ですわ。でも……」
 そこまで言って1号サチエルは2号ユミエルに顔を向けた。
「そういう呼ばれ方をされたからには、アレをやらないわけにはいかなくなりましたわね。ユミエル、用意はよろしくて?」
「はい!おねえさま!」
 そしてサチエルは右の手を拳に握って自分の右の腰にあて、左腕は指の先までまっすぐ伸ばして体の斜め上に向けてピンと突き出した。ユミエルは両腕を指先までまっすぐ伸ばし、自分の体の右側に地面に水平にそろえて伸ばした。
 俺と麻耶と桂木二尉は腰をかがめて身構えた。あのポーズは何だ?新しい超能力攻撃なのか?
 サチエルはそのまま左腕を、大時計の針のように天に向けたまま左側に回し始めた。ユミエルは両腕をそろえたまま自分の頭上に上げる。そしてサチエルは体の反対側、やや斜め上に左腕を移動させると素早く左右の腕の位置を入れ替えた。ユミエルは体の反対側に両腕を移動させ、力こぶを作る時の要領で直角に肘を曲げた。そして二人は声をそろえて叫んだ。
「ヘンシン!」
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