俺の彼女はインベーダー
 麻耶とラミエルもそれをのぞき込んで驚きの声を上げた。二尉がいつものすっとぼけたニコニコ顔で続ける。
「そう、あり得ないわよね、普通は。ちなみにその重傷者1名というのはラミエルさんの事よ。つまり彼女たちは、ド派手な戦いを仕掛けて繰り広げながら、死人や重傷者が出ないように注意深く被害をコントロールしてたわけね」
 そうか!ラミエルが大けがをした時、それを見たサチエルは異様に動揺して、それで超能力の効き目が極端に弱くなった。だが、なぜだ?俺は直接マクスウェルの魔女1号2号に質問した。
「どういう事なんだ?征服する星の人類になぜそんな気を遣った?」
 1号サチエルが床に目を落としたまま小声で答えた。今まで見て来た、自信たっぷりで冷笑的な彼女とは別人のように気弱に見えた。
「わたくしたちだって、好き好んで他の星を侵略だの征服だのしたいわけではありません。故郷の惑星の政府の命令で仕方なく」
 2号ユミエルはまっすぐに俺たちの方に視線を向けて、訴えるように言った。
「おねえさまは、本当は心の優しい方なんです。わたしだって、政府の方針には反対でした。でも拒否する権利はわたしたちの惑星では、ないんです」
 そうか。ラミエルだって、アミダくじで選ばれて無理やり送り込まれたんだったな。そういう意味では、ラミエルもこの二人も、被害者と言えば言えるのかもな。
 すると桂木二尉はサチエルとユミエルに歩み寄り、突然とんでもない事を言い出した。
「あなたたち、地球に亡命する気はない?そりゃ、あなたたちから見れば原始的な文明の惑星でしょうけど、この星には未来があるわ」
「ちょっと、桂木さん!」
 麻耶が俺たちの意見を代弁するかのように怒鳴った。
「そんな重大な事を独断で決めていいわけ?」
「あら、私の独断じゃないわよ。防衛大臣は了解してるし、日本政府も彼女たちがオーケーと言えば受け入れる方針よ。ついでにまだ非公式だけど、国際連合にもその線で働きかけてるのよ」
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