俺の彼女はインベーダー
「なるほどねえ。で、その脱出用の通路の場所は?」と二尉。もう完全に落ち着きを取り戻した様子だ。サチエルが答える。
「首都高速の、ある場所から入れます」
 しばし二尉は腕組みをして考え込み、やがて意を決したという口調で俺たちを見まわしながら、妙におごそかな感じで告げた。
「なら、とにかくあちら側の地球とやらに行ってみるしかないわね。ただ、かなり危険を伴う任務になるわよ、今回は。だから強制はできない」
「わたしは行きます!」
 真っ先にそう応じたのはラミエルだった。
「早太さんや麻耶ちゃんの存在ごと、この惑星が消えてしまうなんて黙って見ていられません。それにわたしなら、イケスカンダルの科学技術について桂木さんたちよりは詳しいですから」
「わたくしも参りますわ」
 次にサチエルが椅子から立ち上がって宣言した。
「わたくしたちの故郷の惑星がやっている事ですから、それを止めに行くというのなら、それが地球に亡命させていただいたわたくしの義務です」
「ラミちゃんが行くなら、当然あたしも行くわよ」
 今度は麻耶。
「それに、その地球征服計画が成功しても、あたしが地球の支配者にしてもらえるとか、そういう得は何もないじゃない」
 って、それかよ、理由は。麻耶は無言で、しかし有無を言わさぬ目つきで俺の目をじっとのぞきこんだ。俺はたまらず言った。
「分かってるよ!そんな目で見なくたって、ラミエルやおまえだけを行かせるわけにはいかねえだろ」
「なら、わたしも……」
 そう言って椅子から立ち上がりかけたユミエルだったが、サチエルは彼女の両肩を手で押さえつけるようにして止めようとした。
「ユミエル、あなたはここに残りなさい。さっき、その地球の軍人さんがおっしゃったように、どんな危険があるか分からないわ。あなたには、わたくしのような物理的なパワーの強い超能力はないのだし」
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