俺の彼女はインベーダー
 そのあまりに凛々しい立ち居振る舞いに俺の方が恐縮してしまった。
「い、いえ、こちらこそお役に立てませんで」
 それからその若侍は小走りに他の通行人の所へ行き、同じ事を訊いて回っているようだった。いや、さすがにこの時代の人は言葉づかいや態度に何とも言えない気品があるなあ。それはいいのだが、俺はさっきから胸にくすぶっている疑問を麻耶に言ってみた。
「今の……女の子だよな?」
「あら、やはりそうでしたか」
 代わりにサチエルが同意の声を漏らした。
「あ、君もそう思った?」
「そこは同性ですから」
 ユミエルが話に入って来た。
「でも、なぜ男装なんでしょう?」
 その時新撰組の一人がさっきの女の子を大声で呼んだ。
「おおい、チヅル、早くしろ!」
「はい、ただいま!」
 ははあ、チヅルという名前なのか。こりゃ間違いなく女の子だな。そう答えて走り去っていく後姿を見つめながらラミエルがつぶやいた。
「わたしも、時代劇とかで少しは知っているつもりですが。新撰組って女性の隊士もいたんですか?」
「いや、そんなはずはないが……」
 そう答える俺に、桂木二尉が同調する。
「ダンダラ模様の羽織を着ていないところを見ると、新撰組の隊士というわけではなさそうね」
 またユミエルが尋ねた。
「でしたら、どうして、女性が男装して一緒に?」
 俺と麻耶と桂木二尉は一斉に腕組みをして首を大きく同じ方向にかしげて唸った。
「う~ん……」
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