俺の彼女はインベーダー
 麻耶が焦れて怒鳴った。
「ああ、もう、回りくどいわね。ほら兄貴、一応は理系志望でしょ?さっさと調べる!」
 一応は、は余計だと思いつつ口には出さず、俺は化学の参考書を机から取り出して開いた。原子番号というのは、その元素の原子核の内部にある陽子という素粒子の数の事だ。こういう数字は宇宙のどこでも同じはずだから、地球の元素周期表を見れば分かる。
 すぐに分かった。そして驚いた。固まっている俺を麻耶がせかす。
「それ何なのよ!」
「金……だ」俺は夢うつつの状態で答えた。
 麻耶も一瞬絶句して、それから黄色い声を上げる。
「金!金って、あの貴金属?英語で言うとゴールド?」
 ラミエルが俺の手の中の参考書を横からのぞき見て保証する。
「はい、これです。この金属の事です」
 ちょうどその時、サッカーボールぐらいの大きさに小さくしてあったラミエルの例の赤い光の球体の中からピロピロという携帯の着信メロディみたいな音がした。この球体、最大数メートルからビー玉ぐらいまで自由自在に大きさを変えられるらしい。俺の部屋は狭いので、朝起きた時にラミエルに邪魔だから何とかならないかと言ったら、あっという間に小さくして見せた。考えてみればすごいテクノロジーだ。
「あっ、補給物資が届いたようです」
 ラミエルはそう言うと球体に中に片手だけ突っ込んで、銀色の箱を取り出してきた。百科事典ぐらいの大きさの四角い箱で、その中には金が、そうこの世で最も高価な、早い話が金になる、あのまばゆい金属がぎっしり詰まっているのだ!
「よし!早速、これをお金に換えに行くわよ!」と麻耶が叫んだ。
「で、でもどうやって?」とこれは俺。
 そりゃまあ、金を売るってことなんだろうが、日本銀行へでも行くのか?俺は日銀に知り合いもいないし、預金口座だって持ってないぞ。
「アメ横よ。」と麻耶はこともなげに答えた。
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