俺の彼女はインベーダー
第15章 ヨスガノウミ
 その地を揺るがすような振動は30秒は続いただろうか。やがて振動が止まり、崖から小石が落ちて来なくなったが、岩に彫られた巨人の像は全然動きだす気配がなかった。ううん、やはりただの伝説だったのか?
 だが次の瞬間、巨人の右手の上に乗っていた小さな丸い岩が崖から転がり落ちた。それは崖の溝に沿って転がり落ち、地上近くに張ってあった太いしめ縄にぶつかってそれを切断した。その縄は崖の上の松の木にひっかけてあった。そして切れた縄の反対側に結んである別の大きな石が崖の上からまっすぐ落下して来た。
 その石が落ちた場所にはちょうどシーソーみたいに傾いた板が置いてあり、片方の端に石が落ちたショックで板が跳ね上がり、もう片方の端に乗っていたこれまた別の丸い石が宙に飛び上がり、地面に掘られた溝に沿って転がって行った。
 昨日来た時は気づかなかったが、この崖の周りには石板が十数個並んで立っていた。転がって来た丸い石がそのうちの一個の石板に当たり、石板が倒れ、それが次の石板の根元あたりにぶつかって次の石板が倒れ……ああ、もう!何なんだ、これは?やけに長々と。俺のそばで麻耶が腕組みをして左のつま先で地面をトントンと叩きながら見ていたが、とうとうイラついて怒鳴り出した。
「ああ、もう!この仕掛け作った奴って、どういう性格してたのよ?」
 まあ、それは同感だ。ただ、性格に関してはその人も、麻耶にだけは言われたくないだろうが……そしてたっぷり3分間、似たようなシーソー仕掛けやらドミノ倒しみたいな事が繰り返された後、海辺の石燈籠に最後の丸い石がたどり着き、その根元の穴に吸い込まれた。
 するとどういう仕掛けなのか、石燈籠の蝋燭を置く部分に火が付き、昼間でもまぶしい強烈な光が三度、海の方に向かってフラッシュのように瞬いた。それでも何も起こりそうにないので、俺はたまらず桂木二尉に問いかけた。
「あの、やっぱり単なる伝説だったんじゃ?」
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