俺の彼女はインベーダー
「あのう、あれが到着する前に、俺たちはこの世界からおいとました方がよくないですか?」
「そ、そのようね。さあ、みんな、戻るわよ!」
 俺たちが出て来た時空の穴があるお堂は小夜ちゃんの家の近くだったから、まず小夜ちゃんをお母さんの元へ送り届け、俺たちはお世話になった俺を言って、急用で南蛮の国へ戻る事になったと告げた。
 案の定小夜ちゃんは俺に行くなと泣きついてきたが、本当の事を言うわけにもいかないし、言ったところで小夜ちゃんに理解出来る話ではないだろう。ぐずる小夜ちゃんをお母さんが説き伏せ、お堂まで見送りに行くという事で納得させた。
 いよいよお堂にたどり着き、まず桂木二尉が一人先に入って異常がないかどうか確認する。二尉が一旦出てきて、小夜ちゃんのお母さんに最後のあいさつをした。
「本当にこの度は何から何までお世話になりました。娘さんのお力までお借りしてしまって」
「いえ、この子がお役に立ったのなら、我が家の謡い姫の家系にも本望でございました。どうか、道中お気をつけて」
 それからサチエル、ユミエル、麻耶、ラミエル、俺の順でお堂の扉から時空の穴へ抜けて行く。俺の番になった時、それまで黙って下を向いていた小夜ちゃんが泣きながら俺に走り寄ってきて俺の上着の裾をつかんで駄々をこね始めた。
「兄様、やっぱり行っちゃイヤ。小夜を置いて行かないで!」
 予想してはいた事だが、俺は目頭が熱くなってきてしまった。出来る事なら俺だってそうしてあげたいが、こればっかりはなあ……小夜ちゃんのお母さんが後ろから彼女を抱きしめて俺に向かって言う。
「さあ、今のうちに。これ、小夜、兄様を困らせるでねえ」
 小夜ちゃんはなおも俺に向かって叫ぶ。
「兄様!どこの国へ行けば兄様にまた会えるの?」
 俺はとっさにこう答えた。
「21世紀という国だよ。俺はそこにいるから」
「じゃあ、小夜、いつかきっと兄様に会いに行く。ニジュウイッセイキという国に会いに行くからね」
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