俺の彼女はインベーダー
 急にラミエルの口調がしどろもどろになった。俺はその時全てを悟った。俺は目の前にラミエルの上着の襟をつかんで乱暴に持ち上げた。そしてラミエルの目をじっと覗き込んだ。ラミエルは思わず視線をそらした。
「ラミエル!最初からそれを知っていたな?」
「よして、兄貴」
 横から麻耶が割って入った。ラミエルを吊るしあげている俺の腕をつかんで引き離そうとする。俺はラミエルの体を麻耶に押し付け、そのまま二人まとめて道路脇の金網フェンスに突き飛ばし脚を前に進めた。
 今度はサチエルとユミエルが同時に俺の前に立ちふさがった。サチエルが言った。
「あなたに黙っておこうと言いだしたのはわたくしです。多分こうなさるだろうと思いましたので」
「どけ」
 今度はユミエルが目に涙を浮かべて俺に訴えかける。
「お願いです。分かって下さい。ラミエルさんだって辛かったんです」
「うるさい!どけ!どけと言ってるんだ!」
 俺の疲れ切った体のどこにそんな力が残っていたのだろう?俺が両腕を振り回すと、二人は軽々と横に弾き飛ばされた。さらに時空の穴に近づくと桂木二尉の姿が視界に入って来た。俺はさらに大声で怒鳴った。
「あんたもだ!桂木さん、そこをどけ!」
「早太君、ごめん」
 さりげなくそう言った桂木二尉の横を強引に通り抜けようとした瞬間、俺は呼吸が止まり、その場にひざが崩れ落ちた。俺の腹、みぞおちの辺りから二尉がゆっくり拳を引くのが見えた。みぞおちにパンチをくらうと気絶するという話を聞いた事はあった。だが、自分でそれを実際に体験するまでこれほどの劇的な効果があるとは思わなかった。
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