俺の彼女はインベーダー
 俺はラミエルの頭から手を離し、窓の外に目をやった。窓越しに見えた空は、あの江戸の町から見た空と何も変わっていないように見える。今も150年近く前のあの空も、何も変わっていない。人間の命だけが移り変わっていくだけで。俺はベッドから降りながら誰にともなくつぶやいた。
「それで、いいのかもしれないな」
 医務室のドアを横にガラッと開くと、麻耶とサチエルとユミエルが折り重なってこっち側に倒れてきた。一緒にドアにもたれかかって耳をあてて中の様子を盗み聞きしていたらしい。
「何をベタなお約束やってんだ、そろいもそろって」
 俺が呆れてそう言ったところに、桂木二尉がルンルンとステップを踏みながら廊下の角から現れた。二尉は満面に笑みを浮かべて俺たちに言った。
「あら、ちょうど良かったわ。全員いるわね。明日から一泊二日でキャンプよ」
「はあ?どういう事です」
 そう聞き返す俺に二尉はうれしくてたまらないという口調で答える。
「久しぶりに休暇が下りたのよ。今回の失敗で敵の宇宙人側もだいぶ損害を被っただろうから、地球征服をあきらめてはいないとしても、再開するには相当時間がかかるだろうって上のお偉いさん達も考えてね。いやあ、この件の担当になってからまともな休みなんて一日もなかったのよねえ。というわけで、休暇を満喫するために全員で奥多摩へキャンプにレッツゴー、ってわけよ」
「はあ、俺と麻耶はもう夏休みだし、ラミエルはもともと何もしてないからいいですけど」
 そう言って俺はサチエルとユミエルの方に視線を向けた。
「この二人まで連れて行って大丈夫なんですか?」
「その二人は当面日本政府が保護するけど、日常生活は普通に送らせる様にしなきゃいけないしね。まあ、地球の生活を体験してもらう、いいチャンスでしょ。許可は出てるわよ」
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