俺の彼女はインベーダー
それを問いただそうとした瞬間、麻耶が俺の左腕をつかんで腕時計の文字盤をのぞきこんだ。
「おっと、十分経ったわね。よし、あっちの店にするわよ」
そう言って向かって左側の宝飾店に俺達を引き連れて入って行く。小さな、妙に中が薄暗い店で奥のカウンターに六十前後ぐらいのじいさんが一人座っていた。どうやらこの店の経営者らしい。
店主は麻耶をひと一目見るなりこうあいさつした。
「おや、いつものお嬢さん。今日は買いですか、それとも売り?」
「売りよ」と慣れた口調で麻耶が答える。
「かしこまりました。今日のお連れさんはずいぶんお若い殿方ですね」とそのじいさん。
「ああ、これはあたしの兄貴。実の兄さんよ。ほら、兄さん、ちゃんと免許証持って来た?」と麻耶。
「こういうの売るには身分証明書が要るの」
ああ、それでこいつ出かける前しつこく免許証持ったかって何度も訊いたのか。俺は二輪だが運転免許証は持っている。もっともバイクそのものは大学に合格するまでおあずけ食らっているが。
女ども二人から持たされた山のような荷物を店の隅の床に置き、俺はラミエルからあの球体から出てきた箱を受け取ってカウンターに近づく。この時俺はある事に気づくべきだったのだが、なにせ初めての経験だったのでそこまで気が回らなかった。
箱を開けると確かにそこには金の塊が入っていた。想像していたよりずいぶん小さいような気がしたが、三人とも純金の塊を売るというのは初体験だったので、なにしろ金なんだから、まあこんなものだろう、としか思わなかった。
店の主人は品物を確かめさせてもらいますと言ってカウンターの奥の小部屋に消えた。すかさず俺は小声で麻耶にこう言った。
「おい。お前ここじゃずいぶん顔みたいじゃないか。それに『今日のお連れさんは』ってのは何だ?お前の日頃の行動について帰ってからゆっくり話があるぞ」
麻耶は澄ました顔で天井を見ながらぬけぬけとこう返しやがった。
「やあねえ、兄さん。思春期の少女なら実の兄にも言えない事の一つや二つあって当然でしょ?」
「おっと、十分経ったわね。よし、あっちの店にするわよ」
そう言って向かって左側の宝飾店に俺達を引き連れて入って行く。小さな、妙に中が薄暗い店で奥のカウンターに六十前後ぐらいのじいさんが一人座っていた。どうやらこの店の経営者らしい。
店主は麻耶をひと一目見るなりこうあいさつした。
「おや、いつものお嬢さん。今日は買いですか、それとも売り?」
「売りよ」と慣れた口調で麻耶が答える。
「かしこまりました。今日のお連れさんはずいぶんお若い殿方ですね」とそのじいさん。
「ああ、これはあたしの兄貴。実の兄さんよ。ほら、兄さん、ちゃんと免許証持って来た?」と麻耶。
「こういうの売るには身分証明書が要るの」
ああ、それでこいつ出かける前しつこく免許証持ったかって何度も訊いたのか。俺は二輪だが運転免許証は持っている。もっともバイクそのものは大学に合格するまでおあずけ食らっているが。
女ども二人から持たされた山のような荷物を店の隅の床に置き、俺はラミエルからあの球体から出てきた箱を受け取ってカウンターに近づく。この時俺はある事に気づくべきだったのだが、なにせ初めての経験だったのでそこまで気が回らなかった。
箱を開けると確かにそこには金の塊が入っていた。想像していたよりずいぶん小さいような気がしたが、三人とも純金の塊を売るというのは初体験だったので、なにしろ金なんだから、まあこんなものだろう、としか思わなかった。
店の主人は品物を確かめさせてもらいますと言ってカウンターの奥の小部屋に消えた。すかさず俺は小声で麻耶にこう言った。
「おい。お前ここじゃずいぶん顔みたいじゃないか。それに『今日のお連れさんは』ってのは何だ?お前の日頃の行動について帰ってからゆっくり話があるぞ」
麻耶は澄ました顔で天井を見ながらぬけぬけとこう返しやがった。
「やあねえ、兄さん。思春期の少女なら実の兄にも言えない事の一つや二つあって当然でしょ?」