俺の彼女はインベーダー
第3章 女たちの大和
 前回の失敗を繰り返さないため、翌日の夜俺と麻耶とラミエルの三人で再び作戦会議ということになった。麻耶が実家から調達してきた俺の母親特製のおでんを三人でつつきながら、いかにして月八万七千円の軍資金で効率よく地球を征服するかについて激論!になるはずだったのだが……
 なぜかラミエルがおでんを頬張りながら泣きだしてしまって、俺と麻耶はしばらくあっけにとられて絶句してしまった。おふくろの名誉のために言っておくが、決しておでんがまずかったせいじゃない。
 それどころかラミエルは、最初こそ見慣れぬ食い物を前にして当惑し、おそるおそる箸で、まるでピンセットで危険物をはさむかの様な表情で、おでんダネを一つ一つ、つつき回していた。が、ちくわぶを一切れ噛んで味わったところで、いきなり両方の目からボロボロと大粒の涙を流し始めたのだ。
 おれも驚いたが麻耶も相当びっくりしたようだ。
「ラミちゃん、どうしたのよ?もしかして、舌をやけどでもしたの?」とテーブルに身を乗り出して訊いた。
「いえ……ひっく……とても、とてもおいしい……私、生まれて初めてなんです……人の手で料理した物を食べたのって……」
 ラミエルはそう言いながら、しっかりと手だけは次から次へとおでん種に伸ばして食べ続けた。
 俺はふと不審に思って尋ねてみることにした。考えてみれば、俺はラミエルについて地球を侵略に来た宇宙人という以上の事はほとんど何も知らない。それは麻耶も似たようなものだ。
「あの、ラミエル……君は自分の星では何をしていたんだ?地球征服に選ばれたってことは軍人だったのか?」
 まあ、選ばれたと言ったってアミダくじで、なんだが・・・
「私はただの学生でした。学問のレベルはわたしの星の学校の方が上だろうとは思いますが、地球で言えば、まあ高校生に近いです」
 これは意外な答だ!確かに肉体的な年齢も見た目も俺や麻耶と大差ないし、むしろ気の弱いところは俺達より子供っぽくさえある。
 ひとしきりおでんを平らげ終わったラミエルは、自分の故郷の星の事をぽつぽつと聞かせてくれた。
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