俺の彼女はインベーダー
 と、まさにその時、俺の部屋の隅に今日はビーチボールぐらいの大きさで転がっていたラミエルの赤い球体がピロピロリーーンと間抜けな音をたてた。どうやらその兵器とやらが転送されて来たらしい。
 麻耶にせかされながらラミエルが球体に手を突っ込んでその物体を引っ張り出す。それは一メートル四方どころじゃなくもっと小さかった。縦横五十センチ、奥行き十五センチ程度の黒い箱だ。表面に使い方のマニュアルらしい妙に光沢のある紙が貼ってある。もちろん彼女の星の文字で俺達には読めない。
「ねえ、何よそれ?早く教えて!」
 麻耶が小さな子供のようにラミエルをせかす。ラミエルはマニュアルを読みながら、かつ例のコンパクト型のスパコンで何かを調べながら答える。
「ええと……鉄を自在に変形、加工する装置だそうです。鉄の含有量が全重量の51パーセント以上なら……まあ簡単に言えばどんな物体でも好きな形に変形させて操れる、というところみたいですね」
「その操れる鉄の物体も一メートル四方なのか?」とこれは俺。
「いえ、対象となる物体の大きさに制限は無いようです。と言っても、この星に現存する物体でないと現実には使えないと思いますが」
 そのラミエルの言葉を聞いた麻耶の両目がピクリと動いて直ちに妖しい光を放ち始めた。こいつが悪だくみを考え始めたサインだ。もっともそれに気付く事が出来るのは俺と数人の親戚だけなのだが……
「鉄……鉄ねえ……東京タワーをドリルに変えるとか……あ、でも未完成だけど東京スカイツリーの方がもう大きいわね……」
 妹の半ば独り言と化したたわごとを無視する事に決めて、俺はラミエルに訊いた。
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