俺の彼女はインベーダー
「こら!兄貴!起きろ!」
 という麻耶の怒鳴り声で俺は心地よい眠りから引きずり出された。
 大あくびをしながら半身を起こすと、なんと俺のすぐ横にラミエルが寄り添うように寝ていた。同じアパートの部屋の中とは言え、ラミエルは一応女の子らしいので、寝るときは例の赤い球体の中で寝るのだが、今回は彼女も疲れ果てていてその場で眠りに墜ちてしまったらしい。時計を見たらたっぷり十時間は経っている。
 つまり俺は十時間以上もの長い間、地球換算年齢十七歳の、それも結構可愛い女の子と体が密着せんばかりの状態でずっといたわけで、そうとは気づきもせずぐっすりと眠り込んでいた、ということか。
 しまった!なんというもったいない事を……
「こら。今何を考えた?」
 麻耶に考えを読まれそうになったので、俺は急いで夕べまでの作業状況の報告を始めて話をそらした。そのうちラミエルも目を覚まし、コンパクト型スパコンで大和の状態を確認する。どうやら復元、改造は完了したらしい。
 さて麻耶司令官殿の一声。
「よし、出撃よ!」
 それから俺達は隅田川の近くまで歩いていき、そこでラミエルの球体に乗って水中へ移動、川の中を通って東京湾へ出て、それから一路鹿児島沖へ向かった。目的地の海底に着くと、そこには見事に復元された戦艦大和が浮上の時を待っていた。裂けた船体や壊れた砲や機銃も完璧に復元されている。
 俺達を乗せた球体はそのまま大和の艦橋に入り込み、今からここがこの新生大和の操縦室になるのだ。
「浮上開始よ!」
 麻耶の号令でラミエルがコンパクト型スパコンを操り、大和は海底を離れ急激に海面へと浮上する。上部構造が水の上に飛び出した瞬間、大量の海水が船体のあちこちから滝の様に落下する。
 念のため主砲、副砲、機銃をひとつひとつ動かしてみる。全てちゃんと動く。六十年以上の長き時を経て、今日本の誇る巨大戦艦は復活した!
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