俺の彼女はインベーダー
 というやり取りがあって、翌日俺は麻耶に言われた通り、近所で一番大きそうな銀行の支店へ行き、客待ちのロビーで案内係のおねえさんを捕まえて麻耶に言われた通りに尋ねてみた。
 すると「外国為替は二階のカウンターになります」と言われて、言われるままに二階のそれらしき窓口へやっとたどり着き、「あのう……百ドル紙幣を一枚だけ欲しいんですが……」と見事に伝えた。えっへん。
 ところが予想だにしない言葉が返ってきてしまった。
「どこの国のドルをお求めですか?」
「えっ?ドルって何種類もあるんですか?……」
「はい、アメリカドル、カナダドル、オーストラリアドル、ニュージーランドドル、シンガポールドルがございます。最近はブルネイやジンバブエのドルをお求めのお客様もいらっしゃいますが、そちらは丸の内の本店のみでのお取り扱いとなっております」
「すいません……ちょっと電話で確かめます」
 窓口のおねえさんの、天使のようににこやかな笑顔の下にある軽蔑の視線を痛いほど感じながら、俺は携帯で麻耶に助けを求めた。今なら昼休み中のはずだ。運よく九回目のコールで麻耶が出た。
「ただ『ドル』と言ったらアメリカのドルに決まってるでしょ!まったくもう!そんな事だから大学落ちるのよ。いい?アメリカのドル、米ドルで百ドル。百ドル紙幣で一枚!分かったわね!」
 で窓口に舞い戻りおねえさんにアメリカのドルでしたと告げ、百ドル紙幣を一枚と付け加えた。九千二百十五円ですと言われて、訳が分からずに持ってきた一万円札を出し、お釣りを受け取ってそのままアパートへ帰った。
 部屋で待っていたラミエルに尋ねてみたが、彼女の星では紙や金属で出来たお金はもう六百年も前に廃止されていると言う。どうも電子マネーやカードだけで全ての買い物や支払いが出来るらしい。だからラミエルにも、この百ドル紙幣をどう使うのかは見当もつかないという返事だった。
< 45 / 214 >

この作品をシェア

pagetop