俺の彼女はインベーダー
 さて夕方になって、制服の夏用セーラー服のままの麻耶が息せき切って俺の部屋に飛び込んできた。俺が苦心惨憺の末手に入れてきた百ドル紙幣を手にとってじっと眺め、そしてやおらラミエルにこう言った。
「ラミちゃん、これのコピーを大量に作れる?十億枚と百億枚とかの単位で」
「はあ、それは可能ですが……ただ一度その紙切れのコピーに使うと、この複製機はもう他の用途には使えなくなりますけど……それでいいんですか?」
「問題なしよ。ただ隅から隅までそっくり同じでないとダメよ。そこは大丈夫?」
 ここで俺はやっと妹の意図を理解した。
「こら!それは偽札作るって事じゃないか!そりゃもう犯罪だろうが!俺はおまえをそんな風に育てた覚えはないぞ!」
「あたしだって、兄さんに育ててもらった覚えはないわよ」
 麻耶は眉一つ動かさずそう言ってのけて俺を諭すように話を続けた。
「前回は直接武力に訴えようとしたから失敗したのよ。地球征服はなにも武力だけが手段じゃないわ。今回は経済戦争てとこね」
 突然ラミエルが両目から大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら畳の上に正座して額を床に擦り付けんばかりに謝り始めた。
「すいません……わたしの受け取る金が少ないばかりに麻耶ちゃんにこんな事をさせてしまうなんて……すいません、すいません……わたしに稼ぎが、甲斐性が無いばかりに……お世話になっているお二人をこんな事に……うう……」
 いや、別に君に養われているわけじゃないし、俺も麻耶も。どっちかというと逆なんじゃ?
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