俺の彼女はインベーダー
 なぜそうなのかは今でも理解出来ないが、こいつの言うことは結構一理ある事をこれまでの経験で多少は分かって来たので、ここは麻耶の言うとおりにした。俺たちが立っている屋根の下に十分な数の人間が集まってきた頃を見計らって、俺はまず左腕をまっすぐ上に上げ、人差し指だけをさらにまっすぐ上にピンと伸ばした。
 ううむ、ほんとにこれで「謎の秘密組織の指導者っぽく」見えるものなんだろうか?
 下を見るとさすがに国際連合、白人、黒人、アジア系、スーツ姿、アラビア衣装その他諸々、いろんな人たちがいる。ここで麻耶が、ラミエルのコンパクト型スパコンにつないだ小型マイクを握った。
 演説なら地球上のあらゆる言語をあやつれるラミエルの方が適任なのだが、なにせあの気の弱さ。ちょっとやじられただけでも卒倒してしまうかもしれない。そこで麻耶が日本語でしゃべりラミエルのスパコンで英語に同時通訳するという方法を取った。
 いよいよ麻耶の演説が始まった。

「地球人類を代表する存在としてあなた方に伝える。この惑星は豊富な水、資源、食料生産能力を持ちながら、それを一部の国家が独占し、生存に最低限必要な食料の平等な分配さえ未だに実現していない」
 そこで息をつき麻耶は続けた。
「我々は見た。貴重な食料資源をごみとして平気で捨てる人類がいる一方で、その日の食事さえ満足に与えられない子供たちが多くいる、この惑星の現実を……」
 俺はハッとした。こいつ、「table for two」の事を言っているんだ。麻耶は続けた。
「しかもこの惑星は未だに統一政府すら樹立できず、同じ惑星の人類同士が殺し合うという野蛮な行為を続け、しかもその戦争という野蛮な殺りく行為のために貴重な惑星上の資源を浪費することを止めない。我々は同じ宇宙に住む知的生命体として、これ以上この惑星の愚かな人類の蛮行を見過ごす事は出来ない。よって……我々はこの惑星を征服し管理下に置くことに決めた。地球人類代表として国際連合は、今より四十八時間後までに降伏を宣言せよ。もし我々の要求が受け入れらない場合、我々は最終兵器を発動する。その最終兵器が何なのかは、一時間後に分かるだろう。繰り返す。地球人類は四十八時間以内に我々に降伏せよ!」
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