俺の彼女はインベーダー
 さて二人が買い物から戻ってきて俺は缶コーヒー、二人はペットボトルの紅茶で喉を潤し、そして今回は珍しくまだラミエルの軍資金に手をつけていなかった事に気がついた。そこで、麻耶がいっちょうパーッと遊びに行こうと言いだした。
 確かにこのところ、麻耶は別として、俺とラミエルは作戦のために働きづくめだったから俺も羽を伸ばしたくなった。ラミエルも異存はないという事だったので三人で六本木の街へ繰り出した。
 まず普段より豪華なレストランでランチを取り、女二人の秋物の服を買い、ついでにカラオケへという流れになった。もちろんラミエルはカラオケは生まれて初めてだろうから、けっこう面白い事になりそうだ。いや待てよ、歌わせてみたらビックリ、プロ並みの美声なんて可能性も……
 そんなどうでもいい事を考えながら通りを歩いていると、突然俺たちのすぐ前に、六本木の街にはどうにも似つかわしくないプロレスラーみたいな男たちが現れた。黒っぽいスーツに黒いサングラスという格好だが、どう見てもクラブの黒服とかじゃない。髪が短く刈り上げられていて、動作もいかつい。
 その一人が手に持っているトランシーバーみたいな物を俺達の方に向けた。かすかにピピピピ……という音が聞こえて来る。いや、あれはトランシーバーじゃない、電波探知機だ!
 麻耶もとっくに異変に気づいていた。
「二人ともあたしについて走って!」
 言うが早いか、ラミエルの手首を握りしめてすごい勢いで走りだした。今日の麻耶はショートパンツ姿に底の低いショートブーツといういでたちだから、かなり速い。ラミエルはスカート部分の長いワンピースにパンプスという格好だから麻耶についていくのはかなりしんどそうだった。俺はジーンズにスニーカーだったから一番楽な格好だが、それでも妹の走るスピードについて行くうちにゼイゼイ息が切れた。
 いやはや、やっぱり体力じゃ若いあいつにはかなわない。年は取りたくないな、全く……とはいえ、ただの追いかけっこならあんな屈強そうな男たちにはすぐ追いつかれただろうが、六本木の街でかくれんぼの要素が加わったら現役女子高生に勝てる奴はいない。
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