俺の彼女はインベーダー
 そして座り込んでいるラミエルの背中をやさしく撫でながら言った。
「もういいわ、ラミちゃん。このブローチの正体が分かれば、後はこっちのものよ。せいぜい振り回して遊んであげる。フフフ……」
 そこで突然部屋の電話が鳴った。ひゃっと飛び上がる俺を尻目に麻耶は電話に近づき、フロントからである事を確認してぼやいた。
「なんなのよ、まだ一時間も経ってないのに」
 受話器を取ると男の慌てふためいた声が俺の所まで聞こえてきた。
「お客さん、早くそこから避難して下さい。例の殺人光線をだすUFOが上空に出現しました!」
 俺達三人は顔を見合わせて呆然とする。麻耶が電話口に向かって叫ぶ。
「上空ってどこの上空なの?」
「ここです!六本木の真上にいるんです!だから早く部屋を出て避難を!」
 そう叫んで電話は切れた。ホテルの従業員もそれから全員逃げ出したんだろう。
 ラミエルがはっと床から飛び起きて、自分のバッグからコンパクト型スパコンを取り出し開く。そしてラミエルも叫んだ。
「いけない!このコンピューターからの指令電波も遮断されていたんです!通信が途切れたので、最後に電波が発信されたこの場所に瞬間移動して来て……それに……」
「それに?……それに何なのよ!」
 今度は麻耶が金切り声を上げる。ラミエルはもともと白い顔を幽霊にように蒼白にしてこう答えた。
「もう自動で素粒子放射の準備に入ってます……」
 俺たちは脱兎のごとくとはこういう事か、という勢いで部屋を出、階段を駆け上がってホテルの外へ出た。例の発信機入りブローチは途中でダストシュートに放り込んだ。
 ホテルのある路地は狭いので、少し広い通りへ出る。小さな公園があったのでそこまで行く。ビルに遮られた視界が少しは開けると……いた!あの円盤が上空、二百か三百メートルほど上に浮かんで赤い光を放っている。
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