俺の彼女はインベーダー
 俺は一縷の望みをかけてラミエルに訊いた。
「あ、あのさ……今からまた過去へ戻って、すり替えられた赤ん坊時代の君と麻耶をまた元に戻すなんて……そんな都合のいい事は……」
「可能です!」
 ラミエルはコンパクト型スパコンを見ながら、珍しく強い口調で言った。
「ただし、わたしたちの体感時間で十二時間、それがタイムリミットです!それを過ぎるともう歴史の再改変は不可能になります」
 ならば取るべき道はひとつしかない。俺とラミエルは大急ぎで彼女の球体に駆け込み、再び十六年前の地球と十七年前の彼女の星を行ったり来たりして、赤ん坊時代の麻耶は地球の病院のベッドに、同じく赤ん坊時代のラミエルは彼女の星の新生児用カプセルに、元通りに戻してきた。
 全てが終了したのは、ラミエルが言ったタイムリミットのわずか二分前だった。やれやれ、危なかった。

 地球へ戻る彼女の球体の中で、今度はラミエルが先に自分の変化に気付いた。艶やかな黒髪だったラミエルの髪が少しずつ元の紫色に戻っていく。どうやら今度のすり替え元に戻し作戦が成功した証拠のようだ。俺はほっとしたが、ラミエルは少し残念そうな口調で言った。
「あーあ、戻っちゃった……ずっと麻耶ちゃんの黒い髪にあこがれていたのになあ……フフ……ちょっとがっかりです」
 地球の大気圏に入ると、俺たちは念のため地球軌道上を一周して何か変なところがないかどうか確かめた。どうやら大規模な破壊の跡はない。
 東京上空からも地上の様子を念入りに確認した。高層ビルが倒れているところもないし、東京タワーは元の姿でちゃんと立っているし、大規模な焼け跡も見当たらない。いつも通りの気ぜわしい大都会の姿だ。
 それを確認し終わって俺のアパートの近くの公園に着陸した時にはもう夕暮れが迫っていた。俺とラミエルが今回の時間旅行に出発してから二日目の夕方だ。球体から出たらどっと疲れが体中からあふれ出した。
「あーっ!そんなとこにいたあ!」
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