俺の彼女はインベーダー
 大した距離でもないのに、公園にたどり着くまでの時間が何倍にも何十倍にも引き延ばされたように感じた。息せき切って公園の中に飛び込む。公園の中にあの球体は見当たらない。人も誰もいない。
 いや、いた!奥のベンチにたった一人、変な灰色の服を着た人間がぽつんと座っている。あのシルエット、あの髪形、あれは……あれは……
「ラミちゃん!」
 麻耶の方が俺より早く反応した。俺を突き飛ばすように横を駆け抜けていき、ベンチの人物の肩をつかみ、顔を上げさせ、必死で話しかける。
「やっぱりラミちゃんだ!ラミちゃん!ラミちゃん、あたしだよ!分かる?」
 だが、なぜかラミエルの反応は鈍い。というより、今目の前にいるのが誰だか分かっていないような感じだ。俺も麻耶の横に並んで彼女をしっかり観察する。間違いない、ラミエルだ。俺が彼女を見間違えるはずはない。それだけは絶対にない。
 だが、ラミエルは俺の顔を見ても声を聞いてもほとんど無反応だった。その時やっと俺はラミエルが両手で奇妙な円筒形の機会を抱えている事に気付いた。恐る恐るその機械に指で触れてみる。
 すると機械がウィーンと妙な音を立てて作動し始めた。機械で作ったような声が日本語で語り始めた。
「この惑星の原住民と確認……これより流刑囚について説明する」
 流刑囚だって?どういうことだ?状況から見て間違いなくラミエルの事を言っているはずだ。
「この者は故郷の惑星から課せられた重大な使命に失敗した。そのため、我々は彼女の全ての記憶を消し、文明の発達していない野蛮な惑星に終身流刑とする事に決定した。君たちがこの者を今後どう扱おうと、一切君たちの自由である。なお、その星での最低限の生活に必要な現地の言語の記憶を再生する事は許されている。……くり返す。この者はその星に終身流刑となった。この者の生命を含めて、君たちがこの者をどう扱おうと全て君たちの自由である」
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