超短編「蛙が人魚に恋をした」
豪雨
台風が近づいていた。






その日…。夏実の姿がなく。プールに行ったがいなかった。






どこを探してもいない…。






「まさか…。」
帰ったのか?…。






雷が聞こえた。何か唸り声のような、呼んでいるような気がした。





停電になっていた。
そのまま、なんとなく屋上に向かった。






ガチャ…。鍵は開いていた。






雨の中に人影…。






「夏実!」






「健太…。迎えが来たらしい。」






夏実の姿が白い人魚から白くて大きな龍になる。





「待てよ!行くな…。俺お前の…。お前のことが好きだ!」






白い龍は不思議な声で鳴いた。
なんて言ったかわからない。






雨が強くなる。視界は見えない。






一際大きな稲光が走ったのがわかった…。






音が消えると雲が切れた。
光が漏れる。天使の梯子だっ…。






虹がそこにかかって綺麗だった。






白い人魚は消えた。
学校の誰も夏実のことは覚えていなかった…。






俺以外…。
どんなに他人に話そうが信じて貰えず…。
俺は…夢っ…。と思うようにした。






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