たとえばの明日に花束を
それからはどうやって帰ったのかさえ、覚えていない。
部屋でベッドに寝転がり泣いていると、ドアが静かに開いた。
「お姉ちゃん」
「大丈夫?」
私の弟、ユウと妹の優緋が部屋に入ってきた。
それも泣きそうな顔で。
「…志紀お兄ちゃん、ぜんぶ忘れちゃったんでしょ?」
「嘘だよね?」
小学校五年生にして純粋な二人は、真実を受け止められないらしい。
「……嘘じゃ、ない…よ…」
私は途切れ途切れそういった。これ以上喋ると何もかも嫌になりそうだった。
胸が痛い
心が痛い
記憶の中の君の笑顔が、痛すぎる。
二人は静かに出て行った。
すすり泣く声が微かに耳に届いたけど、心配の言葉は今はかけられなかった。