たとえばの明日に花束を
すれ違う人がスローモーションのように見えて時間が何倍にも感じる。

息を切らして教室の扉を開けた。


「天音!!」

「れ、いこ……ハァッ、ハァッ…」



教室には二人がいた。

沢渡さんは教卓に座り、麗子はその前に立っていた。



「あっれぇー。ほんとに来ちゃった」

「さ、沢渡さ…」

「ちょっと沢渡…あんた志紀と付き合ってるんですって?」



麗子が尋ねると、沢渡さんはにやりと笑った。




「そうだよ?
やっぱり真綾の傍には、あのくらいのイケメンがふさわしいのよね」

「ふざけんじゃないわよ!!」

「記憶を失った志紀クンったら案外簡単におちちゃったぁ」



沢渡さんはバカにした態度で喋る。

私はその言葉の数々を呆然と聞いていて、次第に怒りが膨らんでくる。




「もう志紀クンは真綾のモノなのっ。」



その一言に、私の中の何かが……切れた。
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