3つのKiss
『っ…ぅ、家からじゃ、ちょっと頭がガンガンして1階まで移動しにくいの』


「そっか…」


紗弓の部屋は2階。
電話があるのは1階中心。


たしか紗弓の部屋にも子機がなかったっけ…?
ちょっとうろ覚え…


『だからまたしばらく、連絡出来そうにないの。ゴメンね…?』


「ううん。紗弓が謝る必要ないよ…じゃ、お大事に」


『ありがとう。十雅の声聞いたら少しマシになったかもね…♪それじゃ…っ!』


最後にまた、咳が出そうになったのだろうか。
ガチャッ、とすぐに音がした。



“十雅の声聞いたら少しマシになったかも”



そんな言葉で、喜んでる俺は
結構単純かもしれない。


でも、紗弓の声を聞いただけで
完全に生気を取り戻した俺はもっと単純だな…


そんな事を思いながら
一人でクスクスと笑っていた。





紗弓が休んで三週間…。
もうすぐ1ヶ月経ってしまう。


俺は電話もメールもお預け状態で…
魂が抜けたかのようにダラーンとしていた。


学校でなんか『雲雀が死にかけてる…』とか
『きっと疲れが溜まってるのよ。そっとしておいてあげましょ』とかとか…

無意味な同情の目をもらっている。


流石におかしくない?
ここまで休む?


入院してるみた…



入院?



「…んなワケねぇかぁー」


ははは…と、虚ろ笑い。
…本当に大丈夫か…?


そんな面持ちのまま
俺は授業中もボーッとしていた。


どんよりと曇っている空が
ただただ広がっていた。





< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop