3つのKiss
「にゃ~…」


俺が連れて来られた場所はココ。
古びた神社の裏側だった。


そしてそこには、ボロボロのダンボールに
ボロボロの古びたタオルケット。


その中には、小さい小さい命があった。


「この子猫、捨てられちゃったみたいなの…」


「捨て猫か。酷い人もいるよな」


「うん…こんなに可愛いのに」


紗弓はその子猫を抱き上げて
優しく撫でている。


「私ね、ここにたまに来てからお弁当の残りとかあげてるんだ~」


「あ、だから最近残してたの?」


コイツは小さい頃から少食で
小さい弁当にいつも飯を入れている。

俺だったら絶対持たないな。
午後まで。


けれど、俺の質問に紗弓は首を横に振った。


「ううん。本当に残っちゃうの」


「へぇ…」


本当、そんなので持つのか?
ただでさえ体が弱いのに…



紗弓は小学校の低学年までは全然健全だったんだけど、
それから段々、病弱になってきた。


部活だって運動部とかには入部せずに
文化部に入部した。


「よかったら暇な時でいいから、お世話手伝ってくれる?」


「別に良いぜ?」


「ありがとっ」


「わっ」


急に抱きついてくるから
俺は体制を崩して後ろにしりもちをついた。


「危ねぇだろ!」


「えへへー」


「ったく…」


幸せそうに笑ってるから
…ま、いっか。って気持ちになる。


「もう暗くなってきたし、帰るぞ。ほら、早くどけ?」


「…」


「紗弓?」


どうしたわけか、紗弓は俺に抱きついたまま
固まっていた。ただの無視?






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