3つのKiss
俺は走っていた。
久し振りだ。ココまで全力疾走で走ってるのは。


『2ヵ月前くらいから入院してるの』


『入院?!』


俺はお姉さんに聞いた。
2ヶ月前…紗弓が学校を休み始めた頃だ。


『40度の高熱でね、ずっと下がらなかったのよ。
そのせいか、もう紗弓は長くないでしょうって…』


長くない…
それは、もう直ぐ死ぬって事?


『でも、この前の嵐の日に紗弓は病院を抜け出して帰って来たときにはビショビショ。
おかげでまた熱が上がっちゃって…』


…この前だ。
俺と紗弓の関係が…終わった日。


紗弓の奴、病院抜け出して来てたのかよ。


『その時に紗弓に“私の事は十雅だけには言わないで”ってお願いされちゃったの』


だから俺には理由、言わなかったのか?
でも、なんで別れる必要があったんだ?


…俺と別れなかった事が心残りで
死んでも死に切れないと思ったから?


…自分で思って自分でダメージうけた…。



お姉さんに言われた病院に着くと、
受付の人に紗弓の病室を聞いた。


そして一つ一つ探していく。
304…305…306…

307!
ここだ。


カチャッと白い扉を開ける。
そして俺の視界に入った光景が


「はぁ…はぁ…」


「紗弓、もう少しの辛抱よ!」


紗弓が肩で辛そうに息をしていて、
紗弓のお母さんがベットの隣に座って
紗弓に話しかけている光景だった。


「紗弓…?」


「!!と、十雅くん…」


俺の声に、紗弓のお母さんが過敏に反応した。
俺はゆっくりと紗弓の近くへ移動する。


「紗弓…紗弓?」


顔を覗き込む。
すると…


「と…ぉ、が…?」


薄っすらと目を開けて
俺を見た。


「な、んで…ココに…?」


「お前の姉さんに無理矢理聞きだしたんだ」


はぁ、はぁ…と、苦しそうな息遣い。
熱で潤んでいる瞳。


辛そう…
出来ることなら変わってやりたい。




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