3つのKiss
「…っつ、紗弓…」


馬鹿…。
なんでこんな手紙残すんだよ。


これじゃあ嫌でも
現実を見ないと駄目だろ?


それにコレ、大分前に書いてたみたいだけど…
もう、死ぬ事分かってたんだな。


最後に俺と話してたとき、
本当はすごく辛かったんだろ?
苦しかったんだろ?


なのに、俺となんかと話すために…


「…」


自分の机の上にある、俺と紗弓の写真を見る。


あぁ…これは確か、
今年の春に桜の下で取ったんだっけ…


「…っ」


重たい体を起こすと
机から筆記用具と便通を取り出した。


そして、何年ぶりかの手紙を俺は
静かに書き始めた。






俺は一人、紗弓の部屋に入った。
全然変わらない部屋。


キョロキョロと見回せば
机の上に置いてある電話の子機に気付いた。
やっぱ、あったんだ…


他に、ベットに置いてある
紗弓の携帯。


ちょっと開いて見れば
全然壊れてはいない様子。


やっぱり、病院に入院してる事
俺に気付かれないようにしてたんだな…


胸が痛む。
けれど、先ほどより全然マシだ。


俺は書いた手紙を
そっと指輪の入っていた箱に挟んだ。


「紗弓、指輪は約束通りあげるからな」


静かな紗弓の部屋でそう言うと
俺は自分の部屋に戻った。






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