3つのKiss
「うっ…ヒック…」


「……」


映画終了後、俺達はトボトボと歩いていた。


「感動したね~…ぅっ、えっく…」


「うん…」


俺は流石に泣かないけど
感動したのは感動した。


「ゲホッ…グズッ」


「顔洗って来いよ…」


「うん…」


そう背中を押して
紗弓を洗面所に行かせた。


よっぽど感動したのかな…
なんて、思っていた。


洗面所から出てきた紗弓は
少ししんどそうだった。


「大丈夫かよ。もう帰るか?」


「ん…大丈夫」


そう言いながらも咳をしている紗弓。
大丈夫なもんか。


「今日はもう帰ろ?」


「ゴメンね…」


体調悪かったんだ…
悪い事、しちゃったかな。


辛そうな紗弓の手を握ると
俺はゆっくりと歩き出した。


歩幅は紗弓にあわせながら。






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