星の船 ー淡い月の鍵ー
(あの人!?…なんで…)


「なっ、何しやがるッ」

枯草色の男が苦痛に顔を歪める。


「騒ぐな」 

初めて聞く黒い男の声は、
低く、鋭く相手を制す。


黒い男は、捻り上げる手に更に力を入れ、
空いているもう片方の手で、落ちた大柄の男の銃を拾い上げた。

そして、静かに、

「いいか、皆楽しい旅行中だ。俺もこの引き金を引きたくはない」

大柄な男の後頭部に銃を突きつけた。



それからのことはあっという間で、
流羽が気付いた時には

枯草色の男は廊下の隅に縛り付けられ、自由を奪われていた。

「鉄道警察(トランシェ)には連絡しておくから、安心しろ」

誰にともなく、黒い男は話す。

「あ、あの…、ありがとうございますっ」

やっと礼の言葉が出たが、
流羽は内心まだ警戒していた。

素性の分からない、この黒い男を。


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