星の船 ー淡い月の鍵ー
「ああ、もう平気。ごめんな、心配かけて」

うつむく理由に気付かず、柊は流羽からココアを受け取る。
そして、すまなそうに、

「何だか結局、同室になってるし…」

しまった…という表情になる柊。


「だって、C等寝台よりB等個室(ここ)の方がゆっくり眠れるよ、ね、柊くん」

「…いや、それはどうかな…」

「私も柊くんと一緒の方が、安心してグッスリ眠れるし」

「…そこまで気を許されるのも、複雑だな…」


窓枠に肘を掛けたまま、
更に困った表情で柊は口元を掌でおさえた。


〝月人〟の発作

〝キィ〟のこと


流羽は分からないことばかりで、
柊に聞いたり、話したりしたかった。


でも、そうする事はなかった。

(聴いたら、今のままではいられなくなる…)

そんな不安。


柊もまた、
その事には触れず、話す事も聴く事も、なかった。

その事が、余計に流羽を不安にさせた。


(ヘンなの…、自分も同じ事してるのに…)

モヤモヤとした、よく分からない感情に、
流羽は戸惑うばかりだった。


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