合縁奇縁
急に読むのを止めた朝生に、日本史教師は怪訝そうな目を向けてくる。

「どうしたんだ、春」
「先生」

心配そうな声に被せるように、朝生は声を発した。

「すみません。
お腹がすっごく痛くて今にも死にそうなので、早退します」


そのまま、呆気にとられたような日本史教師を尻目に、朝生は鞄を引っ付かんで 教室から出る。

後ろから、日本史教師の引き留めるような声がしたが、朝生はきっぱりと無視する。

今は、それでころではなかった。


「僕に、頼みたいこと…?」

急に冬哉の言った言葉が気になってくる。


「一体、僕が何したっていうんだよ…」


しかし、何かに導かれるようにして走っている自分に気付いた朝生は、ため息をついたのだった。


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