合縁奇縁
「来たか」

息をきらせながら家に入った朝生が見たのは、まるで“そうなる事が分かっていた”かのように声をかけてくる冬哉だ。

―――いや、実際に分かっていたのだろう。
でなければ、“今日、分かる”なんて言葉が出るはずがないのだ。


「…隠岐、冬哉。
最も忌むべき帝…」

朝生は、確認するように 小さく呟くようにして言う。

それに、冬哉は微かに眉をしかめた。


「言うな。
…余の最も嫌う語だ」

しかしそれから、嘲るような表情をつくると

「どうせそれも消える。
余の命が容易く消えたように、人の認識も、な」

軽く肩をすくめる。


「春日 朝生。
余はお前に用がある。
頼まれろ」


それから、朝と同じような台詞を言うと

「返事は聞かんがな。
これは、既に決定事項だ」


朝生の額に、手のひらを押し付けた。

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