炭坑の子供たち(2)
 1年に3回程、映画鑑賞会と言うのがあった。

教室の窓に黒い幕を張り、業者が映写機を据えて

いよいよ映画が始まるが

大抵、文部省推薦の教育映画か

三益愛子や乙羽信子などの、おばさんが出て来て

これでもか、これでもかとばかりに

無理に泣かせようとする、芸術祭参加作品だったので

面白い事も何ともなかった。

それでも、頭を使う勉強よりはいいので

みんな、初めはおとなしく見ていたが

やがて、暗がりをいい事に

「漫画が見たいのう、漫画が…」

「チャンバラ映画はないとか?」

「桃色映画でもいいとに」

と、あちこちで声が上がり

その都度、拍手がわき起こる

まだ画面が動くだけマシな方で

幻灯(げんとう)と言うのは、絵が全く動かず

スライドで、大きな絵本を見ている様なものであった。
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